1.「経営資源」とは何なのか

(1) 経営資源の「5つの要素」

 「経営資源」とは、経営を支え発展させるための「要素」のことです。 では経営は、どのような要素で構成されているのでしょう。

大きく区分すると、5つの要素で構成されています。
① 人、②物、③金、④情報、⑤ノウハウ  この5つです。それぞれの要素の中身は、下記の内容です。

 ①人・・・・・人材(従業員)
 ②物・・・・・商品(取り扱っている商品)
 ③金・・・・・売上、利益、経費
       (経営状況の数値的実態)
 ④情報・・・・有益な知識、知らせ
       (外部からのニュースソース)
 ⑤ノウハウ・・手法、アイデア
       (知的なテクニック)

経営資源には「質と量」があります。勿論、質は高く量は多い方が経営は有利になります。 同時に、「質と量」により、経営の特徴と今後の方向性が見えてきます。 経営資源とは自分の会社がもっている経営の要素のことですが、その要素にはそれぞれの役割があります。

そして質と量にも競争相手との差があります。その差を細かく分解すると、 自身のポジションが明確になり課題と方向性が見えてきます。

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(2) 経営の状況を位置づける「4つのグループ」


 経営資源の「質と量」により、4つのグループに分けることができます。

①全方位戦略(リーダー)


 経営資源の質が高く量が多いため、売上も高く利益も多くなり、リーダーと位置付けられます。 全てにおいて業界で一番です。そのため全方位戦略を取ることができます。

②差別化戦略(チャレンジャー)


 経営資源の質が低く量が多いため、売上は高く利益は少なくなり、チャレンジャーと位置付けられます。 競争相手が多く、同質化傾向にあります。 そのため差別化戦略を図ることで、全方位戦略(リーダー)を目指していきます。

③隙間戦略(ニッチャー)


 経営資源の質が高く量が少ないため、売上は低く利益は高くなり、ニッチャーと位置付けられます。 質の高い経営資源を活かし、大企業ができない隙間戦略で隙間を責めることで特徴づけができます。

④模倣戦略(フォロワー)


 経営資源の質が低く量が少ないため、売上は低く利益も低くなり、フォロアーと位置付けられます。 このままでは経営維持ができません。そのため模倣戦略をとり他社を真似る必要があります。 事業計画を最初からやり直すことも求められます。

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このように経営資源には深い意味があります。 自身の経営資源を冷静に分析することは、非常に重要なことなのです。 人・物・金・情報・ノウハウは、決して簡単に語れるものではありませんが、 理解すればより質の高い経営を目指していくことができるのです。

まとめ
・経営資源とは、骨格となる要素。
・質と量があり、売上・利益の大小と関りが深い。
・位置づけ(立ち位置)を確認できれば、自身の戦略が決まる。
・経営資源のバランスを整えると、経営状況は改善する。

 2.「経営」とはどのような作業?

 確かに、経営は「売上を伸ばし利益を生みだす行為」です。 しかしそれは数値的結果であり、結果だけを求める考え方です。これでは経営を維持・拡大はできません。

経営資源である「人・物・金・情報・ノウハウ」の5つの要素が、経営の骨格であることを前述しました。 経営資源を上手く使いこなし、成果に結びつけていくかという作業が求められます。

経営にはそれぞれ問題や課題があります。 人材不足、商品力が弱い、集客できない、情報発信ができていない、リピーターが増えない等の原因は経営資源に起因しています。 その結果として、売上・利益が生み出せないのです。

勿論、どんな会社でも経営資源は万全ではありません。 そのため、自社の「強み・弱み」を正しく分析し認識する必要があります。 弱みは強化し強みは伸ばし、バランスよく整えなければ競合・競争相手には勝てません。

更に、経営資源を競合・競争相手と差別化することにより「独自性」が生まれます。 経営資源を把握し、バランスよく上手く育てていけば、数値的結果である「売上・利益」を残していくことができるのです。

経営にとって重要なことは、経営資源の要素を正しく理解し、自身の位置づけ(立ち位置)を知ることです。 そして、今後「どこを目指すのか」方向性を決める必要があります。 そのために、「要素をどのように補い伸ばしていこうとするのか」を決定しなければいけません。

この意思決定こそが、問題・課題の解決であり、改善のための「経営方針」なのです

まとめ
・経営とは、売上と利益を生みだす行為。
・経営資源を上手く使いこなし、成果を求める。
・経営のバランスは経営資源のバランス。
・改善のための方向性の意思決定が経営方針。

 3.「戦略と戦術」の違い

 戦略と戦術」は、全く別ものですが、相互に重要な関係があります。 前述したようにその違いは下記の内容です。

 戦略とは
  計画(目標)を達成するための「方向」
 戦術とは
  計画(目標)を達成するための具体的「手段」

「相互に重要な関係」と申し上げましたが、戦略と戦術は経営全体の骨格の一部分なのです。 その骨格は、下記の表です。

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(1) 経営の骨格とは


 最初に、経営の骨格について説明します。経営の形には骨格が必要です。
経営の骨格は以下のようになります。

 ① 経営理念
   なぜこの事業を行うのか
 ② ターゲット
   誰に対しての事業なのか
 ③ ストアーコンセプト
   店舗のあり方、イメージ
 ④ 商品政策
   何を販売するのか、どのような特徴があるのか
 ⑤ 販促、サービス
   宣伝・PRの方法、サービスの内容

これは基本的な経営戦略です。形を作って経営を進めなければ、経営状況はバラバラになります。 お気づきだと思いますが、事業の骨格は①→⑤の順番で決めていきます。 この骨格の方向性は、一貫していなければいけません。


(2) 「戦略」とは


戦略とは、事業を計画(目標)とおりに進めるための方向」と申し上げました。 ①経営理念は起業の原点ですから別と考えます。
②ターゲット→⑤販促、サービスには、それぞれ方向生が必要です。

例えば、

 ②ターゲット戦略
   20~30歳代の女性をターゲットとする
 ③ストアーコンセプト戦略
   仕事に疲れた女性が落ち着けるイメージ
 ④商品戦略
   安心安全で使いやすい商品特性
 ⑤販促、サービス戦略
   女性雑誌で宣伝しポイントトをつける

このように「戦略」とは、経営資源を骨格に事業計画を立てる(方向性)ことが戦略です。 内容が一貫性した事業の方向を示すものなのです。


(3) 「戦術」とは


「戦術とは計画(目標)を達成するための具体的な手段」と申し上げました。 同様に②ターゲット→⑤販促、サービスには、それぞれ具体的な手段が必要です。
例えば、

 ② ターゲット
   20~30歳代が関心のある雑誌で宣伝
 ③ ストアーコンセプト
   木調のアンティークな内装にする
 ④ 商品政策
   添加物を使わず、天然素材を使う
 ⑤ 販促、サービス
   〇〇雑誌に掲載し、会員カードを発行する

「戦術」とは、事業計画に基づき、具体的な手段・方法を明確にすることです。

最後に、戦略と戦術の一貫した方向性に対し、自分の会社がもっている経営資源をどのように活用していくのか。 そして、競争・競合相手とどのように戦っていくのかの「策」が必要になります。その「策」が、戦略であり戦術なのです。 そのためには「差別化」の意味と手法を理解しなければいけません。

まとめ
 ・戦略は経営の方向。
 ・戦術は具体的な手段。
 ・経営資源を骨格に、戦略と戦術で事業計画を立てる。
 ・戦略と戦術は、一貫した方向性が求められる。

 4.「ターゲット戦略」とは

 「ターゲット戦略」とは、不特定多数の客層を狙わず、自分がイメージする(来店して欲しい)顧客の層を絞り込み、その顧客を集客する戦略です。 「顧客の層」とは、性別・年齢・ライフスタイル・マインド・テイスト等、様々です。 「ターゲット戦略」とは、この客層の中から、どの顧客を狙っているのかをはっきりさせる戦略(方向)です。

「お客さんが来てくれればいい」という考え方があります。確かに経営側から考えると、お客様が多くなければ事業は成立しません。 しかし、顧客の層から見ると、その事業がどのような顧客に支持されているのかというバロメーターなのです。
例えば、

 ・若者をターゲットにしたが、中年層が多い。
 ・OLをターゲットにしたが、学生が多い。
 ・家族連れをターゲットにしたが、男性が多い。

等、思い描いた顧客の層とは異なる顧客がターゲットにな場合があります。 商品の取り揃え・価格帯・店舗の雰囲気等、狙ったターゲットとのミスマッチが原因です。 戦術に問題があります。

ビジネスとして成立していればいいのかも知れません。 しかし、ターゲット戦略を重要視するのであれば修正が必要です。事業計画が根底から崩れているからです。

逆に、事業計画が間違っていた可能性もあります。 地域の特性やロケーションから考えると、そもそも事業計画上のターゲットを確保することが難しかったのかも知れません。 この場合は、事業計画の修正が必要になります。

事業計画のターゲット戦略は、事業の成功を左右する非常に重要な要素なのです。

まとめ
・ターゲット戦略とは、狙う客層を決めること。
・客層には、性別・年齢・ライフスタイル等違いがある。
・狙った客層が来ない場合には、ミスマッチの原因を調べる。

 5.「差別化」の意味

 ある意味では、「戦略と戦術」は競争・競合相手との「差別化」が目的です。 差別化は同一グループの競争から抜け出すための「独自性」をもつことです。

例えば、同じような店が2件あればどうなるでしょう。 同じ顧客の「取り合い」になります。最後は、価格競争が発生します。 「安売り合戦」の結果、利益が減少し経営は苦しくなります。 どちらかが潰れるまで続ける「体力勝負」になります。

他に方法はないのでしょうか。 価格競争に走らず、顧客と利益を確保する方法は「違い」をつけることです。 その「違い」が「独自性」です。

独自性により競争・競合相手との同質化から抜け出し、価格競争も最小限に抑えることができます。 このような一連の施策を差別化と言います。

差別化は、競争が発生した場合のみに使う手法ではありません。 むしろ常に意識すべきことです。

差別化において難しいのは、「どこを、何を差別化する」かです。

 1. 人材(人)
   優れた従業員で、サービス力をアップする。
 2. 商品(物)
   商品に違いをつけ、周りにはない商品を売る。
 3. オペレーション(ノウハウ)
   システムを導入し、早く正確に在庫管理する。

このように、「どこを、何を差別化するのか」を具体的にする必要があります。 これは具体的な「手段」であり戦術です。他店との差別化は、目に見える具体的な形が求められます。

上記の例を見て頂いて、お気づきになったと思いますが、差別化しているのは「経営資源」の要素です。 人・物・ノウハウを例に挙げましたが、金・情報を差別化することもできます。 言い換えれば、差別化は経営資源に特徴をつける作業であり具体的な戦術なのです。

まとめ
・同一の競争から抜け出すための手段。
・「どこを、何を」を具体的にする。
・経営資源の5つの要素を差別化するのが効果的。

 6.マネージメント職と専門職の違い

(1) マネージメント職の役割

マネージメントは、管理者・経営者という意味です。 マネージメント職といっても、守備範囲は会社によっても違います。マネージメント職は、各部門・部署を管理運営する立場です。 そして組織のすべてを管理するのは経営者です。

簡単に言えば、担当する部門・部署のすべてを管理します。 管理とは、最善の方法を選択し、従業員・仕事と成果・方針・情報等うまく物事を運営することです。 マネージメント職の役割は、担当部門・部署を維持、発展させ、会社経営に貢献することです。



(2) 専門職の役割

専門職は、各部門・部署において専門的な知識と技術をもつ職種です。 専門性が強いため、あまり部門・部署の移動はありません。それぞれの部門・部署には、この専門職が必要なのです。

例えば、エンジニア、デザイナー、商品開発などが代表的な職種です。 マネージメント職と比較すると、守備範囲は狭いですが内容は深い仕事です。



(3) 職種の違いに良し悪しはあるのか

それぞれに重要な役割がある

マネージメント職も専門職も、突き詰めていけば限りなく奥深い職種です。 どちらが良いとか悪いはありません。それぞれに価値があり、会社に必要だからです。 あるのは、それぞれの難しさです。

組織上は、マネージメント職が専門職を管理する立場ですが、互いの「代行」はできません。 それだけ役割が違うからです。重要なことは、豊富な経験の中から本人が選択することです。



その人の得意な分野で活躍する

人には、それぞれの得意分野があります。みんな同じではありません。 得意分野で活躍できるのであれば、納得して仕事ができます。 自分に合った職種で仕事ができることが大切です。苦手な分野では、順応できなければ限界があります。

いろんな仕事を経験し積み重ねていくのは重要なことです。自分に合ったやりたい仕事が見えてくるからです。 そのためには、今の仕事の好き嫌いだけで考えず将来を考えましょう。 人の考えはどんどん変わり、誰でも可能性をもっているのです。



時代が変われば求められる「事と物」も変わる

社会情勢や企業を取り巻く環境が変われば、会社も変わっていきます。 時代の変化に伴い、求められる「事と物」が変わっていくからです。だからこそ豊富な経験は必要です。

マネージメント職が合っていると思っても、実際にやってみると専門職の方が合っている場合もあります。 勿論、その逆もあります。 決して思い込まず時間をかけて経験する方が、本当に合った職種を見つけることができるのです。